2009年09月25日

死刑は純粋に罰として捉えるべきだ

デミウルゴスの轡銜(ヒカン)の方で行った議論を受けて、自分の立場をもう一度整理したいと思う。

あちらでの議論の中で、死刑廃止論というのは、論者によっては極刑としての死刑を廃止することに拘らないということが分かった。ここでは、そのような立場の論者を極刑としての死刑廃止を主張する立場と区別して、「死刑廃止」論と記述することとする。

「死刑廃止」論では外患誘致罪などの極端に例外的な犯罪に関して死刑が設定されているのは容認されるということである。現行の外患誘致罪の法定刑は死刑のみだが仮にこの犯罪が発生した場合に死刑判決が下されて死刑が執行される場合、「死刑廃止」論者はどのような対応を取るのか興味があるところだ。当然、死刑執行を是認しなければ立場が一貫しない。

このように「死刑廃止」論は生命権の不可侵性の主張を放棄しているといえる。つまり、「殺人罪などの比較的よく発生する類の犯罪の量刑として死刑は過酷過ぎる」という主張と等価である。
これは一つの立場として尊重されるべきであり、このような価値観が普及することにより民主的なプロセスを動かして、殺人罪などの法定刑が軽減されたり死刑執行を停止する法律ができることについて、個人的に反対ではあるが異論はない。

しかし、「死刑廃止」論の立場は安田弁護士の『死刑を認めると、この国の人権や生命は、最悪の場合は奪われてしまう程度のものであることを認めることになる』という批判に背を向けている。以前に書いたように死刑の存廃の分水嶺は安田弁護士が指摘するこの部分であると私は思う。

実のところ、私も死刑廃止の方が正しいのではないかという気がしないでもない。諸外国、特にOECD各国の動向を見ると、何か確固たる理由があって進められていると考えるのが自然だからだ。しかし、その「何か」が何であるかを得ることができなかったので、私は死刑存置の立場を継続せざるを得ない。

また、私の立場としては厳罰化の方向ではあるが、死刑が絶対に必要だと考えているわけではない。例えば死刑廃止がEUのようなものに加盟するための条件になっており、それにより国益が期待できるなら、(筋が通らない思いは残るだろうが)功利的な視点から死刑廃止にも賛成すると思う。


私の立場では、犯人が憎いから殺すのではなく、償いとして殺すのではなく、価値がないから殺すのではなく、社会にとって有害であるから殺すのではなく、ただ単に罰として殺すのである。

遺族は犯人が死刑になれば幾許かの達成感を得られるかもしれないが、行き先を失った憎しみが残るだろうし、悲しみが癒えるわけでもないだろう。
償うというのは原状回復の概念だが、殺人罪で原状回復を考えても意味がない。
人間の価値を評価するようなことを書いている判決もあるだろうが、あれは不遜だと考える。

単に罰であり、報いである。また、やり得を許さない、反社会行為を決して許さないという社会の強い意思の表示であるべきだと考える。

「報復感情を少しでも満たすために死刑が必要」といった報復感情の議論はおかしいと考えている。そういう意味で私は死刑存置論者としては少数派であるかもしれない。
報復感情を満たすことを刑罰の(効果ではなく)目的として認めてしまうと、遺族のいない殺人事件の犯人を処罰する根拠を失ってしまう。また、遺族の人数に応じて量刑を考慮しなければならないことになる。刑罰に報復感情をある程度満たす効果はあるだろうが、そもそも報復感情を充足することはできない。

そもそも刑罰は第一義的には犯罪を抑止するためにあると自分は考える。例えば事故に至っていない交通違反に被害者は存在しないので報復感情は存在しないが、事故を未然に防止するためにも罰は必要だ。
#通常の交通違反は行政罰で処理されるが、ゴネて裁判に行くと行政罰と量的に同等の刑事罰が受けられる。

刑罰が抑止力を発揮するためには、犯罪を犯すと0でない確率で法定の罰を受け、犯罪により得られる利益は(確率を考慮しても)罰のリスクに見合わないと犯罪者が確信する必要がある。

冤罪の問題は死刑に限ったことではない(菅家さんの名誉は回復したが、原状回復したといえるのか)が、それでもやはり死刑の最大の問題は冤罪であると思う。
冤罪の可能性については、再審請求がされている事件については死刑を執行しないというような運用の変更をすればいいと思う。当然、法改正は必要だ。ほとんどの死刑が形骸化するかもしれず、それによって罪刑法定主義の理念に反すると批判されるかもしれない。それでも無罪の可能性のある人を処刑するよりはよいと考える。これは事実上の「終身死刑」の創設である。また、財政面を考慮して、再審請求中の受刑者は懲役を行うべきだろう。
ここでは一度議論になったが、罪を認め、死刑を受け入れたものが死刑を執行されることに対する具体的な異議は受けていない。
posted by naotok at 00:36| 東京 ☀| Comment(1) | TrackBack(0) | その他 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年09月24日

千葉法相に法に基づいた執務を期待する

16日に発足した鳩山内閣で法務大臣に任命された千葉景子氏は「死刑廃止を推進する議員連盟」(廃止議連)に所属しているということで、死刑が執行されるかどうかが注目されている。

千葉氏の個人としての思想信条として死刑に反対するのは尊重されるべきである。ましてや、これを前提として国民の負託を受けて国会議員となっている。

しかし、現行法の下では死刑は執行されなければならず、死刑の執行には法務大臣の同意が必要である。延期するための合理的な理由が個別にあるような案件以外では滞りなく死刑が執行される必要がある。これが担保されなければ、法治国家における最も基本的な原則である法の下の平等が損なわれることになる。

死刑廃止もしくは死刑執行停止を唱えるとしても、法務大臣が立法を伴わずに個人的な思想信条に基づいて執行を差し止めるのは職権濫用である。この職権濫用の問題を回避するためには立法行為が先行する必要がある。

法の下の平等は重々招致であろうし、ましてや法の下の平等よりも確定囚の生命権を優先すべきとはお考えにならないとは思うが、法相としての責任ある職務をまっとうしていただきたいと思う。
posted by naotok at 02:41| 東京 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 政治話 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年09月18日

民主党政権の情報公開に関するアップデート

どうやら916事件の震源地は平野官房長官らしい。要注意人物指定だな、こりゃ。
(写真は民主党ホームページ内のもの)

記者会見クローズの主犯と鳩山さんとリバイアサンの関係 (神保哲生オフィシャルブログ)
http://www.jimbo.tv/commentary/000585.php

でも岡田外相は完全開放するらしい。

岡田外相:全メディアに記者会見を開放 フリーも
http://mainichi.jp/select/seiji/news/20090919k0000m010081000c.html
(ここで付けられている記事投稿条件は、要は実体のあるジャーナリストであることを担保するための基準と思われる)


政府の会見が完全フリーになるのも間近と思われる。
大きな懸念を呼んだ滑り出しの失態だったけど、若干スリップしただけで済みそうな予感。
posted by naotok at 23:20| 東京 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 政治話 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

地球温暖化論争@朝まで生テレビ

(2009/10/1時点では消されているようです。有害と判断されたからではなく、著作権違反だからとのことですが)

YouTubeで8月の朝まで生テレビのビデオを見つけた。
(科学的な思考の訓練をしていない人は見ない方がいいです)


爆笑しながら観た。丸山教授と武田教授が話し出すと笑いが止まらない。全然議論になってない。お互い科学者なのに、この二人は科学の土俵で話をしていない。でも、番組が成立してしまっているのもシュール。
また、コメント欄もシュール。江守さんサイドのコメントは消されてるんだろうか。
江守さん、こんなの相手にしないといけないなんて大変だ。頑張ってください。

温暖化懐疑論は存在は知ってたけど論旨はよく知らなかった。こんなレベルのお話ならネタにしかならないから、もういいや。

何気に政治がらみなので、政治話カテゴリで。

「それアンフェアだから。アンフェア」 笑
科学的な思考の訓練を行っていない人は武田教授の横槍でどっちが正しいのか分かんなくなっちゃうんだろうな。ネタとして面白いんだけど、テレビで一般視聴者に見せるものとしては有害です。
posted by naotok at 00:20| 東京 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 政治話 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年09月16日

鳩山政権、最初の改革に失敗!? orz

官邸の記者会見が記者クラブ加盟各社以外にオープンになるかどうかが一部ネットメディアで注目されていたけど、どうもこの最初の非常に重要な改革は失敗したらしい。
非常に残念な感じだ。

民主党政権は「記者クラブ帝国主義」を打破できるのか? 首相就任会見の生放送に挑戦する!(生放送は終了しました)(THE JOURNAL)
http://www.the-journal.jp/contents/newsspiral/2009/09/1750.html


記者会見がオープンになることの重要性はこちらのビデオで。

民主党 記者クラブ開放の公約を反故に 神保哲生 x 上杉隆(YouTube)
http://www.youtube.com/user/fotosintesi114ii#play/uploads/7/kdi_xB0_c4o


雑誌記者や海外メディアを入れたというのは進歩なのだろうけど、制限されないことが重要なのだ。
ところで、ぶら下がり会見を1日1回に減らすという方針に対して記者会が言うところの「首相への取材機会を減らすのは認められない」はどういう意味なんだろうか?
「認める」とは何様? 質問は記者会見でしてください。

首相会見、雑誌記者にも開放=「ぶら下がり」は制限要求−民主(時事)
http://www.jiji.com/jc/c?g=pol_30&k=2009091500891
posted by naotok at 23:42| 東京 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 政治話 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

「休暇」

videonews.comのこの記事↓で話題になっている「休暇」という映画を観た。この記事は「5金」なので会員でなくても無料で観られる。

なぜ日本人は死刑が好きなのか
http://www.videonews.com/on-demand/0371371380/000777.php

マル激の二人(神保さんと宮台さん)は死刑廃止論者だ。観たビデオの中ではなぜ死刑を廃止すべきだと考えているかハッキリとは言っていなかったが、「先進国は死刑を廃止して当たり前」というくらいには考えていると読み取れた。

「休暇」は二人が絶賛していた映画なので、死刑廃止に偏ったテーマかもしれないと思っていた(失礼)が、その点に関しては全く問題はなく、中立の立場で客観的にドラマを描いていた。
ずっしりと重い。一度観ただけでは消化しきれない。

簡単にさわりだけを紹介しておこう。
3年ぶりに死刑の執行をすることになった刑務官たちを中心にしたドラマ。受刑者の罪状についてはほとんど描かれないが、性格や生活についてはじっくりと描写される。主人公は刑務官の一人で、刑の執行に当たり一つの決断をするが、これがタイトルの「休暇」に関連する。
そして刑が執行される。
刑の執行の描写は生々しく、死刑存置派である自分の胸にも重く響いている。

レンタルなので、返却するまでにもう一度観たいと思っている。
演技が素晴らしくて、映画としては間違いなく面白い。社会的な問題に関心を持てる人には自信を持ってお勧めできる映画だ。

http://www.discas.net/netdvd/goodsDetail.do?pT=0&titleID=1148631689
posted by naotok at 00:40| 東京 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | その他 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年09月11日

八ツ場(やんば)ダム中止の皮算用の嘘

意外にも八ツ場(やんば)ダムの工事中止に対してメディアによるネガティブキャンペーンが張られている。政権交代がなれば民主党に対するメディアのネガキャンは終わるものと思っていたので意外だ。

気が付いた範囲で簡単に反論できるものだけだが、指摘して反論しておきたい。
なお、私は完全に素人で、八ツ場(やんば)ダム自体の必要性などについては詳しくない。よって、以下はあくまで形式的な間違い、というよりは意図的な誤誘導を指摘するものに過ぎず、八ツ場(やんば)ダム自体を評価するものではない。


1.地方自治体の返還請求があるので、中止したほうが国の負担は大きくなって損だ。

国民がノーと言ったのを受けての政策転換に対して返還請求が有効なのか、真っ当なのか議論があるところだと思う。
しかし、仮に変換されて国庫の負担が増加したところで、その分だけ地方自治体の財政が潤って、国民生活にフィードバックされるなら何の問題もない。
それより、オリンピック誘致だとか都知事の無駄な外遊に費やした経費を返せといいたいが、これは蛇足だ。


2.工事業者の生活はどうなるんだ。

現地の工事業者など、生活が工事に大きく依存している人たち、それも現場にいる末端の人たちが政権交代の被害者であるかのようにメディアがもてはやしている。
まあ、なんとなくそういう話を聞いていると同情の念がわかなくもないが、でも仕方ない。予算の振り向け先を変えれば、元のとこには金が流れなくなり、新しいところに金が流れる。それをためらえば硬直する。
現場の人たちは自分と契約関係のある人たち(多くの場合は会社だろう)に対して、契約を履行するように求めればいい。国との契約関係がある人は、国に対して契約の履行を求めればいい。もちろん、いずれも契約の範囲でだ。

公共事業よりもセーフティネットや子育てに政策として予算を振り向けるというのが正しい方向性だと考えるのであれば、一時的に工事業者の方々の仕事がなくなるのは何の問題もないとみなすべきだ。
今回仕事を失う人は新しい仕事を求めてたくましく生きていって欲しい。


3.中止の後の片付けにもコストがかかるから、ダムは作っちゃった方がいい。

現在の計画では当初の計画の倍のコストがかかることになっている。今後も現在の計画の額で完成する保証はない。
静岡空港の例に見られるように、官僚は無責任主義よろしく見通しの数字を粉飾する。それも少しじゃなくて、都合がよくなるまでとことん粉飾する。
新政権による精査は必要だろうが、片付けコストの説得力は弱い。


4.今までたくさん使っちゃったから、ダムは作っちゃった方がいい。

判断をするときに重要なのは、これまでの経緯を受け入れて、冷徹に今後を見通すことだ。これまでの負けを取り戻すような意図で今後の行動を決定するのは合理性がない。
ちなみに、こういう類の意見を持つ人は投資には向かない。
posted by naotok at 23:17| 東京 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 政治話 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年09月08日

videonews.comがすごい

小沢代表時代の定例記者会見で必ずいの一番に「ビデオニュースの神保です」といって質問していた神保さんのvideonews.comがすごい。

まだコンテンツの全貌を把握したわけじゃないけど、マル激トーク・オン・ディマンドという週イチの番組の出来がとにかくすごい。
1本目で時事ニュースの掘り下げに1時間くらいかけたあと、2本立て2時間くらいで一つのテーマについて最先端の論者を呼んでディープに解説する。
最近の番組で特に気に入ったのは以下の二つ。会員ならバックナンバーはいつでも見られる。

最高裁国民審査を審査する
http://www.videonews.com/charged/on-demand/431440/001205.php
高速道路無料化のすべての疑問に答えます
http://www.videonews.com/charged/on-demand/431440/001223.php

これで月の会費がたったの500円!
小額なので気軽に試せるし、新進気鋭のインターネットメディアを支える意味でもぜひお勧めします。

videonews.com
http://www.videonews.com/
マル激トーク・オン・ディマンド
http://www.videonews.com/charged/on-demand/index.php

当面は東京新聞+videonews.comでいきます。これでも日経1紙より安い。
posted by naotok at 01:07| 東京 ☀| Comment(0) | TrackBack(1) | 政治話 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年09月02日

メディアに注意

さて、無事に民主党が勝利を収め、いよいよ政権交代が実現することとなった。
選挙直前には報道が民主党よりに立ち位置を修正し始めていたので、選挙が済んで結果が確定すれば民主党に対するメディアのネガティブキャンペーンは落ち着くものと思っていた。
現にNHKの夜9時のニュースでは民主党のキーマンを呼んで政策についてかなり自由に話させている。
ところが、一部のニュース番組では民主党の分裂を期待するようなコメントの誘導なども行われているらしい。面白いニュースが欲しいだけなのか何なのか意図は分からない。

民主党の政策は官僚だけじゃなく、既存マスメディアにも厳しい改革を含んでいる。
今回の選挙で自民党のCMはテレビ、新聞、インターネットを問わず相当の料が流れていた。広告団体に相当のお金を落としているはずだ。
今後、メディアはそれぞれの立ち位置を探っていくことになるのだろうが、以前として自民党寄りもしくはアンチ民主党のスタンスを取るメディアも出てくるだろう。

メディアの政治報道にも注意を払う必要がある。

(9月2日夜追記) 特に産経新聞に注意!
posted by naotok at 00:51| 東京 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 政治話 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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